資産の構築と運用の5つのステージ

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【マネーリテラシー】心理会計に気をつけろ! 特に高額の買い物の際に要注意

ルーレット

ウィステリアファイナンス主筆です。

本ブログ『資産の構築と運用の5つのステージ』では、ときどきマネーリテラシーとして資産運用に関する概念、理論、等を紹介していきます。

今回は心理会計についてです。

「悪銭身につかず」ということわざがあります。また『宝くじで1億円当たった人の末路』という本も、少し前に話題になりました。これらには心理会計が関係しています。

心理会計とは

「悪銭身につかず」ということわざがあります。『故事ことわざ辞典』には「不当な手段で得た金銭は、とかくつまらないことに使ってしまい残らないものだという教え」とあります。英語の"Easy come, easy go."という表現も似たニュアンスです。また『宝くじで1億円当たった人の末路』という本も、少し前に話題になりましたね。

これらには人間の持つ心理会計という性質が、影響しているのです。心理会計は心の家計簿とも言われます。英語では"Mental Accounting"です。

 

 

 

心理会計の概念を簡単にまとめると以下の通りです。

  • 人間はお金を心の中の勘定項目で仕分けする
  • お金の入手方法により勘定項目は異なる
  • お金の使い道により勘定項目は異なる
  • 勘定項目によりお金の価値は異なる

人間の心の中には、入金用の銀行口座と出金用の銀行口座がいくつか存在して、入金または出金されるイメージです。

「お金を勘定項目で仕分けする」ことだけでは問題にはなりません。「勘定項目によりお金の価値は異なる」ので問題となります。

心理会計の罠

入金の心理会計

人間の心の中には、入金用の勘定項目がいくつかあります。

給料が仕分けられる勘定項目とギャンブルや宝くじで得た不労所得が仕分けられる勘定項目は異なります。
給料の勘定項目では、苦労して稼いだお金ですので価値は高いです。それに対して不労所得の勘定項目では、あまり苦労していないのでお金の価値は低いです。
このため、不労所得で得たお金は、つまらないことに気軽に浪費してしまいがちなのです。これが心理会計の罠です。

 

投資によって得たお金は、また別の勘定項目に仕分けられます。(投機に近い投資の場合は不労所得と同じかもしれません。)
ここで、投資の勘定項目でのお金の価値は、給料の勘定項目でのお金の価値よりも低くなりがちです。
投資によって得たお金を全て気軽に浪費してしまっていては、いつまでたっても資産は増えません。
これを防ぐためには、心理会計の罠の存在を常に意識することです。投資によって得たお金は、給料で得たお金と同じ価値であることを意識することです。

なお、投資で大きく利益が出ていても、全て再投資して、生活レベルは変えるなとは言うつもりはありません。豊かな生活をおくれることが、投資へのモチベーションになると思いますので。ただし投資で得た利益の少なくとも半分は再投資にまわしましょう。

出金の心理会計

人間の心の中には、出金用の勘定項目がいくつかあります。

例えば同じ食に関わる費用でも、日常生活でスーパーで食材に支払う費用と旅先での外食の費用では勘定項目が異なります。
日常生活での費用は食費、旅先での費用は遊興費です。遊興費でのお金の価値は食費でのお金の価値よりも低くなりがちです。
このため、スーパーで牛肉が和牛か輸入牛かと100gあたり数十円の差で悩んでいる人が、旅先ではせっかくだからと和懐石の竹コースよりも3000円高い松コースを気軽に選んだりします。

旅先でのささやかな贅沢に目くじら立てるつもりはありません。いつも節約ばかりでは人生はつまらないですからね。時には楽しまないと。

 

出金の心理会計で問題となるのは、高額の買い物の場合です。

人間には扱う金額が大きくなるほど、損得の感覚が麻痺していくという感応度低減性の法則があります。
また最初や同時に提示された特定の情報や数値が印象に強く残り、意思決定や判断に影響をおよぼすというアンカリング効果もあります。
これらにより、あらかじめ考えていた予算と価格の差を絶対値ではなく比率で判断してしまいます。

例えば自宅として新築マンションを購入するとして、予算が5,000万円とします。すると出金の心理会計でマンション用の勘定項目が作成され、5,000万円が入金されます。
買おうとするマンションの価格が5,100万円で、予算と価格の差が100万円でも、たった2%の差だからまあいいかとなりがちです。キッチン、備えつき家具や内装のオプションで100万円の追加も、たった2%の差だからと気軽に選択しがちです。
他の用途での100万円はかなりの大金なのに、出金の心理会計のマンション用の勘定項目では、それほどでもないのですね。

同じ理屈で、結婚式の披露宴にてゴンドラとドライアイスの演出を追加したりします(笑)

 

出金の心理会計の罠が実感していただけたと思います。高額の買い物で罠にかかると、日々の節約の成果が台無しになってしまいます。
これを防ぐためには、心理会計の罠の存在を意識することです。特に高額の買い物の際に気をつけましょう。

心理会計を逆手にとって有効利用

これまで、心理会計のネガティブな面を述べてきました。しかし心理会計を逆手にとって有効利用することが可能です。

例えば、出費がかさんで投資の費用をなかなか捻出できないとします。
この場合は、生活費の銀行口座とは別に投資用資金の銀行口座を用意します。そして給料が生活費の銀行口座に振り込まれたら、投資用資金の銀行口座にあらかじめ決めた金額を資金移動するのです。
こうすると心理会計に投資用の勘定項目が作成されます。投資用の勘定項目は生活費用の勘定項目とは別ですので、生活費が不足しそうだからといって、投資用の勘定項目から出金はしにくくなります。

 

自分の心の中には心理会計のメカニズムがあることを知って、罠にはかからないように注意して、逆に有効利用しましょう。孫氏曰く「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」です。

おまけ:行動経済学のすすめ

心理会計は、行動経済学で提唱されている概念の1つです。

日本大百科全書(ニッポニカ)』によると、行動経済学は「人間がかならずしも合理的には行動しないことに着目し、伝統的な経済学ではうまく説明できなかった社会現象や経済行動を、人間行動を観察することで実証的にとらえようとする新たな経済学」です。ハーバート・A・サイモン、ダニエル・カーネマン、リチャード・H・セイラーらによって確立されました。
伝統的な経済学では、人間は必ず合理的に行動する前提でしたが、実際にはそうとは限らない、ということですね。
人間が必ずしも合理的に行動しないのは、判断が必ずしも合理的には行われていないためです。これは認知バイアスの影響と考えられており、その一つが心理会計なのです。

(行動経済学は本当に面白くて役に立つ学問ですので、まずは入門書を一読することをお勧めします。)

 

 

 

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おわりに

今回は心理会計について書きました。

自分の心の中には心理会計のメカニズムがあることを知って、罠にはかからないように注意して、逆に有効利用しましょう。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。
皆様のお役に立てましたら幸いです。

 

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