資産の構築と運用の5つのステージ

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【マネーリテラシー】主観的確率判断に気をつけろ! 宝くじは愚者の税金、生命保険は不運の宝くじ

宝くじと紙幣

 

ウィステリアファイナンス主筆です。

本ブログ『資産の構築と運用の5つのステージ』では、段階的に資産を構築し運用することを提唱しています。(資産の構築と運用の5つのステージの詳細はこちら)を参照お願いします。)
本ブログでは、マネーリテラシーとして資産運用に役立つ知識を紹介していきます。

今回は主観的確率判断についてです。
人間の判断は必ずしも合理的には行われていないことが知られています。これは認知バイアスの影響と考えられています。
主観的確率判断は認知バイアスの一種です。聞きなれない言葉ですが、私たちの購買行動にも関わっています。代表的なものが宝くじと生命保険です。

行動経済学プロスペクト理論

主観的確率判断とは、行動経済学プロスペクト理論を構成する2つの概念のうちの1つです。いきなり難しい言葉がいくつも出てきましたね...

 

日本大百科全書(ニッポニカ)』によると、行動経済学は 「人間がかならずしも合理的には行動しないことに着目し、伝統的な経済学ではうまく説明できなかった社会現象や経済行動を、人間行動を観察することで実証的にとらえようとする新たな経済学」 です。ハーバート・A・サイモン、ダニエル・カーネマン、リチャード・H・セイラーらによって確立されました。
伝統的な経済学では人間は必ず合理的に行動する前提でしたが、実際にはそうとは限らない、ということですね。
(行動経済学は本当に面白くて役に立つ学問ですので、まずは入門書を一読することをお勧めします。)

 

プロスペクト理論行動経済学の創設者の一人のダニエル・カーネマンによって提唱されました。プロスペクト理論は「人間は利益を得られる場面では利益を失うリスクの回避を優先し、損失をこうむる場面では損失の回避を優先する」というものです。要するに、人間は「得をしたい」よりも「損をしたくない」という気持ちのほうが強いのです。
「損失はしたくない」という気持ちが、「損失と認めたくない」、「損失を確定するまでは損失ではない (あきらめたらそこで試合終了ですよ)」と変化して、「損失を確定しない」という判断となりがちです。その間に損失は拡大し続けて、それに耐え切れずに「損失を確定する」行動をとると「大きな損失をする」結果になるのですね。
投資で損切りが難しい理由はここにあります。

利得の価値判断と主観的確率判断

話を戻しますと、プロスペクト理論を構成する2つの概念に利得の価値判断と主観的確率判断があります。

利得の価値判断は「利得には参照点と呼ばれる判断基準があり、利得の価値は金額の絶対値ではなく、参照点からの乖離によって評価される」というものです。
一度、参照点を設定してしまうと、それに引きずられて合理的な判断ができなくなるということです。
「2,000円のところ、今なら1,500円に割引です!」と言われて、参照点が2,000円に設定されると「500円も得だ!」と判断してつい買ってしまうわけですね。本当は買う必要がなかったかもしれません。
認知バイアスの一つの係留バイアスアンカリング効果も同様の概念です。

 

主観的確率判断は、以下の2つの判断です。

  1. 低確率の領域では確率が過大評価され、高確率の領域では確率が過小評価される
  2. 確率0%と100%の近傍では価値判断には不連続性がみられる

1つめの判断により、発生が非常に低い確率の事象については、その確率が実際よりも非常に高く評価されてしまうわけですね。
これにより、発生が非常に低い確率の事象に対して、人間は非合理的な行動をとりがちです。

代表的なものが宝くじ生命保険です。これらについてはあとで説明します。

 

2つめの判断は、人間は「100%確実」を特別に判断するということです。

皆さんは「90%の確率で10万円もらえるが、10%の確率で何ももらえない」と「必ず(=100%の確率で)8万円もらえる」のどちらを選択しますか?

前者の期待値は 10万円×90%+0円×10%=9万円 で、後者は 8万円×100%=8万円 です。前者を選択するのが合理的ですが、非合理的に後者を選択する人が少なからずいるんですね。

このような現象が発生するのは、10万円もらえる確率が100%の場合だけです。例えば同様の選択を10万円もらえる確率が80%と90%とで行っても発生しません。これが不連続性です。

例えば、入居者が決まっていない新築の不動産を購入した時に、不動産業者から賃料保証のオプションを提示されたとします。
この場合、その賃料保証の金額が相場より低くても、このオプションを選択しがちです。

(出典:『現代経済学』依田高典)

宝くじは愚者の税金

宝くじは愚者の税金」という言葉があります。

宝くじ公式サイト 収益金の使い道と社会貢献広報には、「宝くじは、販売総額のうち、賞金や経費などを除いた約40%が収益金として、発売元の全国都道府県及び20指定都市へ納められ、高齢化少子化対策、防災対策、公園整備、教育及び社会福祉施設の建設改修などに使われています」とあります。
肝心の賞金は販売総額の 46.9% ですので、利率の期待値は -53.1% です。

合理的に考えると宝くじを買っても損する確率が非常に高いですね。
それでも宝くじを買う人は多いのはなぜでしょうか?

それは主観的確率判断で説明できます。
宝くじで高額当選する確率は非常に低いので、実際よりも非常に高く評価されてしまうのです。自分は運がいいから、持っている人だから、当たるだろうというわけです。

(実は利得の価値判断でも説明できます。内心はどうせ当たらないと思っていて、参照点が限りなく低いので、損してもあまり悔しくないというわけです。)

 

いずれにせよ、宝くじは買わないほうが賢明ですね。
「夢を買う」にしても最小限の金額にとどめるのがよいでしょう。本当に運がいいなら、それでも当たるはずですから。
もちろん社会貢献のためという崇高な志を持って買っている方々は別です。

生命保険は不運の宝くじ

早死にする確率は、宝くじで高額当選するほどではないにしても、低い確率です。早死にについても宝くじと同様に主観的確率判断が働きます。
早死にする確率が実際よりも非常に高く評価されてしまうのです。自分は不運だから何か悪いことが起こるかもしれない、というわけです。
宝くじで高額当選するのは幸運ですが、早死にで保険金が支払われるのは不運です。この意味で「生命保険は不運の宝くじ」と言えます。

 

生命保険会社は慈善事業をやっているわけではありません。収益事業として成立するためには、顧客が支払う保険料が、顧客に支払う保険金と経費の合計よりも多くなければいけません。
生命保険会社は保険金を支払う事象の発生確率について過去の膨大なデータを持っていますので、それを元に収益性が成り立つように生命保険の商品を設計するのです。

 

生命保険の必要性を否定する意図はありませんが、基本的に損するものである以上、保証は適正なレベルにとどめることをお勧めします。
なお、生命保険の見直しは、ファイナンシャルプランナーが家計の収支改善のために提案する主要な施策の一つです。

おわりに

今回は主観的確率判断について書きました。
自分の判断に悪影響をもたらす認知バイアスについて理解することで、なるべく合理的に判断したいですね。

資産運用をするうえで知っていたほうがよい認知バイアスは他にもいろいろありますので、これから紹介していきたいと思います。

また、生命保険についても書く予定です。ご期待ください。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。
皆様のお役に立てましたら幸いです。

 

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