【ステージ5】資産の出口戦略 相続のために資産ポートフォリオを整備
人生にはいずれ最後の刻が訪れます。
それまでに構築していた資産は、遺産として相続の対象となります。
しかし、相続のトラブルの話はよく聞きます。著名人についての報道とか、このテーマを扱うフィクションも多いですね。トラブルを避けるためには、何をすればよいでしょうか?
また、なるべく相続税は払わずに、より多くを相続してもらいたいのが人情です。相続税対策として、何をすればよいでしょうか?
上手に相続するためには前もって計画的に準備する必要があります。ただし誤った相続対策をとると逆効果になることもありますので、注意が必要です。
今回は相続について説明します。
資産の出口戦略としての相続
本ブログ『資産の構築と運用の5つのステージ』では、段階的に資産を構築し運用することを提唱しています。(資産の構築と運用の5つのステージの詳細はこちら)を参照お願いします。)
【ステージ1】家計の黒字化から【ステージ4】投資による資産構築の加速までは、現役時代に資産運用により資産を増すことを取り扱ってきました。
人生100年時代を迎え、リタイア後も資産運用を続けて、資産を守ることが重要です。
その他に、資産の出口戦略として、資産を次世代にどう継承するかについても考える必要があります。
資産継承の方法としては、主に贈与と相続があります。
以前に「【ステージ5】資産の出口戦略 次世代への贈与で資産の有効活用を」において贈与を説明しました。
生前に贈与しておくことで、相続の対象額を減らすことができます。贈与も相続対策の一環としてとらえることができます。
ただし自分自身の生活を考えると、資産の全てを贈与するわけにもいきません。したがっていくらかの資産が遺産として相続の対象となります。
相続対策のポイント
上手に相続するためには前もって計画的に準備する必要があります。ただし誤った相続対策をとると逆効果になることもありますので、注意が必要です。
相続において考慮すべきポイントは、主に以下の2つと思います。
- 相続トラブルの回避
- 相続税の節税
まず相続トラブルの回避について説明します。
相続トラブルの話はよく聞きます。著名人の没後の遺族間のスキャンダルはしばしば報道されます。遺産相続をめぐる事件を扱う小説、映画やドラマも多いですね。これは避けたいものです。
なお、富裕層は専門家に相談してあらかじめ準備しているため、意外にトラブルは少ないそうです。かえって何も準備してない庶民が、(少額の)遺産をめぐってもめがちです。
また、夫から妻、妻から夫への一次相続では問題なくとも、相続した妻または夫の没後の二次相続でトラブルが発生する場合も多いです。
次に相続税の節税について説明します。
なるべく相続税は払わずに、より多くの資産を遺族に相続してもらいたいのが人情ですね。(もちろん、相続税をしっかりと国庫におさめて、世の中に役立てて欲しいという崇高な精神の持ち主もいらっしゃるとは思いますが。)
自分は資産が少ないので、相続はあまり関係ないと思っている方も多いかもしれません。しかし、2015年に相続税の基礎控除額が4割も減額されました。将来、政府財政の悪化とともに、さらに減額される可能生があります。ますます身近になるわけですね。
上記の相続において考慮すべきポイントへの対策をこれから説明します。
「相続トラブルの回避」の対策
相続人の間のトラブルを避けるための対策として、一般的に言えることは、遺言を適正に作成して管理することです。
遺言の内容については、遺留分を侵害しないことが重要です。遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められる最低限の遺産取得分のことです。
たとえ遺言の分配に不満があったとしても、遺留分が確保されていたら、そのまま我慢する可能性が高いです。しかし遺留分を侵害していた場合には、裁判沙汰になる可能性が高くなります。実際に遺言の一部が無効とされる判例も多いです。
遺言については、専門家に相談して準備することをお勧めします。
遺言以外に重要なことは、相続のために資産ポートフォリオを整備することです。
整備する上でのポイントは、以下の通りです。
- 分割しやすいこと
- 換金しやすいこと
分割しやすいことは、被相続人が複数人の場合に、適正な比率で遺産を分割しやすくするためです。
資産ポートフォリオを整備して、分割が難しい資産は売却して、分割しやすい資産に置き換えることをお勧めします。
特に遺産のほとんどが自宅の不動産の場合は、分割が難しいため注意が必要です。
共同名義とすることはできますが、お勧めしません。共同名義は売却の際には全員の合意が必要となります。
兄弟姉妹(と口出しするそれらの配偶者)だけならまだしも、二次相続で甥姪(と口出しするそれらの配偶者)も加わると、合意形成がより難しくなります。
こうして話がこじれてしまい売却できなくなった不動産が増えています。これが空き家問題の原因の一つとなっています。
自宅に住み続ける場合、自宅の不動産の売却は難しいかと思いますが...
換金しやすいことは、相続人が売却しやすいということです。
葬式や法事のために、また相続税の支払いのために、相続人には現金が必要となります。相続人が遺産の一部を換金して、これらの費用にあてることができるようにすることは重要です。
例えば投資をしたことがない相続人が海外不動産を相続しても扱いに困るでしょう。
また書画骨董や宝飾品といった特殊な現物資産も、相続人が信頼がおける業者を探さないといけませんし、市況によっては価格が大幅に下がったり、買い手がつかずに売るに売れない可能性もあります。
資産ポートフォリオを整備して、換金が難しい資産は売却して、換金しやすい資産に置き換えることをお勧めします。
「相続税の減額」の対策
相続税の節税の方法には、主に以下の2つがあります。(あくまでも節税であって、脱税は駄目ですよ!)
相続税評価額を下げる
相続税評価額を下げることについて説明します。
現金の場合、その金額が相続税評価額となります。それに対し他の資産は異なる場合が多いです。
例えば不動産は一般的に相続税評価額を下げることができます。
土地の相続税の算出には路線価が使われます。路線価は一般的に市場価格の7割から8割と言われています。
他人に賃貸している収益物件は、土地の上に建物が建っているために貸家建付地として扱えます。土地の評価額をさらに下げることができます。
建物の相続税評価額は鉄筋の場合は建築価格の3割から5割と言われています。木造の場合はさらに下がります。
収益物件の場合は賃貸しているので、相続税評価額は借家権割合と賃貸割合の分、さらに下がります。
収益物件の不動産は、現金と比べて4割から5割も相続税評価額を下げることになります。
資産ポートフォリオを整備して、他の資産を収益物件の不動産に入れ替えることは、相続税評価額を下げるために有効な対策です。
ただし気をつけなければならないことは、相続税評価額を下げるために、収益が赤字の収益物件を持つことです。
相続前に資産が減り続けますし、相続人もそんなものを相続しても困るだけです。本末転倒です。
悪質な業者が、相続対策のためと言って、借り手がいないような場所にアパートを建てさせることがありますので、注意しましょう。
業者が利益保証をうたっていたが、2、3年すると保証が打ち切られ、借金と赤字のアパートが残される、といった話がありました。これは記憶に新しいのではないでしょうか。
他にもアンティークコイン等の特殊な現物資産は、相続税評価額が市場価格より下がる場合があります。
これらには換金しにくいというデメリットがありますので、信頼がおける業者がいる場合は検討してもよいと思います。
相続税の控除額を増やす
次に相続税の控除額を増やすことについて説明します。
相続税の基礎控除額は 3,000万円+(600万円×法定相続人の数) です。
これとは別に、生命保険の非課税枠として 500万円×法定相続人の数 があります。
したがって生命保険によって相続税の控除額を増やすことができます。
世の中には相続対策用の生命保険もあります。資産ポートフォリオへの生命保険の追加を検討してもよいと思います。
おわりに
今回は相続について書きました。
計画的に準備を進めることで、自分自身にも相続人の方々にも納得のいく相続を目指しましょう。
今後、相続について、より詳細を書く予定です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
皆様のお役に立てましたら幸いです。
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